ワークショップの話をする前に少しだけ、このスポーツについて説明しましょう。チーム編成は5名で、ゴールキーパーは晴眼者(視覚しょうがい者の対義語)でもよく、アイマスクはつけずにプレイし、他の4人は全員アイマスクをつけます。使われているボールの中には金属の球が数個入っていて、それがぶつかり合う音を頼りにボールをコントロールします。また、国内では老若男女・視覚しょうがいの有無に関係なく試合に出場できるとのこと。
とは言え、このワークショップの参加者は小学校低学年の子どもたち。中にはブラインドサッカーをテレビで観たことがある子もいましたが、まず始めは安全を守るための簡単な説明だけ。“アイマスクをつけている間は目を開けない”“勝手につけない” ここで齊藤さんが「どうして?」と聞くと、子どもたちから「ぶつかる」「怪我をする」「骨折する」といった声が。そこで「だから、アイマスクをつける、はずすの声かけをちゃんと聞いてね。まわりの声も大事。アイマスクをつけた人が安心して動けるのは、みんなの声がたよりだよ」と齊藤さん。なるほど!
ここで2チームに分かれて並び、アイマスクをつけて先頭から後ろへ向かってボールを渡す競争です。競争となるとテンションがあがる子どもたち。2回目をやる前に作戦会議。「どうやったらうまく渡せるだろう?」 もちろん2回目はだいぶ早くなりました。
次にアイマスクをつけた状態で10メートルほど歩き戻ってくるという体験。ターン地点には声をかける担当がいて、アイマスクの人がどうしたら安心して歩けるか考えます。「あと何メートル」という声かけをする子も出てきました。
次はふたり組になり、アイマスクをつけてる子とつけていない子でボールのやり取り。アイマスクのない子が投げたボールの音を頼りに追い足で止め、投げた子に蹴って返します。ここでもアイマスクのない子の声かけが大事です。「あとちょっと」とか「そこ」とかでは伝わりません。アイマスクの子の360度に対して、どう声かけすれば伝わるか、子どもたちは楽しみながら工夫して行きます。
最後は、5メートル先のコーンのところに“呼ぶ人”がいて、ボールを蹴って行きコーンにあてるチーム対抗戦ゲームです。“競争”という手法を使っているのは、「勝つために工夫することが、“気づき”につながるから」と齊藤さん。なるほど!! こうした流れを通じて、率先してボールひろいに行く子や、次の子のためにボールをセットする子も出てきて、楽しみながら、思いやる姿に感動。
最後はプレイヤー齊藤さんのデモンストレーション。スタッフのひとりがアイマスクをしないでボールをドリブルし齊藤さんを相手に、ゴールに向かってシュートにトライするというもの。齊藤さんのすごわざにびっくり仰天!!
2回目では1年生が多かったため、ここは齊藤さんがディフェンスとなり、子どもはアイマスクをつけずにドリブルしてシュートをしました。
齊藤さんはこう言います。「相手の立場になって考えてもらいたい。町中で一番わかりやすいのは視覚しょうがい者。日本では、困っている人にどう対応していいかわからない人が多い。視覚しょうがい者に限らず、アプローチして欲しい」
今回、サッカーが好き、習っていて自信があるといった参加者も多かったのですが、実際アイマスクをつけてやってみると簡単ではないことを実感したようです。齊藤さんのお話によれば、近年日本のチームのレベルもあがり、観る側も楽しく、競技としても面白いことを多くの人に伝えたいとのこと。今回のワークショップでも、子どもたちは思いっきり楽しみました。齊藤さん、林さん、ありがとうございます。